ばねの素材

ばねの復元力を生み出す材料には様々なものがあります。弾性を持つ材料全てがばねの材料となりえるのですが、大きくは金属ばねと非金属ばねに大きく分けられ、更に以下のように分類する事ができます。

  1. 金属ばね(鉄鋼ばね、非鉄金属ばね)
  2. 非金属ばね(高分子材ばね、無機材ばね、流体ばね)

金属ばね

金属ばねは最も一般的に用いられるばねです。コストが安く、大きな力を受けることができたり、大きなたわみ量を確保できたりするのが特長です。強度と汎用性の高さから鉄鋼材料が広く用いられています。
ばね用の鋼材は「ばね鋼」という名称でも呼ばれ、弾性限度を上げるために一般的な鋼材よりも材料中の炭素濃度が高められています。ばね鋼は大きく分けて冷間成形用と熱間成形用があり、冷間成形とは材料が常温の状態でばねの形へ加工することで、比較的小型のばねの成形に適しています。熱間成形とは材料を高温に熱した状態でばねの形へ加工することで、比較的大型のばねの成形に適しています。
ばね鋼の種類としては、炭素を主な添加元素とする炭素鋼、あるいは炭素以外の元素を特別に加える合金鋼が使われます。他にも、耐食性と耐熱性に優れたステンレス鋼などもあります。

非鉄金属の材料としては、黄銅、リン青銅、洋白、ベリリウム銅といった銅合金材料が一般的です。銅合金の電気伝導性の良さを利用しコネクタなどで抵抗や発熱を減らすために使われます。他にも、耐食性、耐熱性ならびに耐寒性が優れたニッケル合金も用いられます。特にインコネルがニッケル合金の中でも一般的であす。400℃以上の高温領域で使用されるようなばねではニッケル合金材料が用いられています。軽量化という点でチタン合金も使用されます。

非金属ばね

金属材料では実現できない特性を得たいとき、非金属材料が使われます。プラスチックやゴムといった高分子材料も利用されます。具体的な材料としては、汎用に使われる天然ゴム、耐候性の高いクロロプレンゴム、振動減衰特性が良いブチルゴムなどが使われています。金属ばねと比較すると、ばね定数を方向に応じて自由に調整できる、ゴムの内部摩擦によって変形時に減衰力が生まれる、といった長所を持ちます。車両用や産業機械用の防振ゴムとして広く利用されています。一方で温度で性能が劣化しやすい、長期の大荷重でクリープが生じやすいといった短所もあります。
プラスチック材料もばねに用いられます。金属ばねと比較すると、プラスチック製ばねには軽量、錆びない、成形が容易といった長所があります。一方で、ゴムのようにクリープが起こりやすい、鋼材と比較すると強度や弾性率が小さいといった短所もあります。プラスチック材料の中では、エンジニアリングプラスチックがばね用として一般的です。
強度の低さを克服するためにFRPもばね用材料として使われます。ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)と炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の2つがあります。力を受ける向きによって強度や弾性率が異なるという特徴があるため、適切な配向でばねを設計する必要があります。CFRPも、板ばねとしての利用が代表例です。CFRPは比強度や比弾性率が特に優れ、疲労強度も高いという長所を持ち、これらの長所を生かし、他の材料では不可能な用途にCFRP製ばねを適用することが試みられています。
無機材料のセラミックスもばねとして利用されています。既存の金属ばねでは対応不可能な高温下でも実用できる耐熱性を持ちます。セラミックスは脆性材料であり、ばね材料としては不適当であると考えられていましたが、高強度のセラミックスが誕生しばねとして実用可能となりました。
空気の弾性を利用したばねは「空気ばね」と呼ばれます。一定温度下では気体の体積は圧力に逆比例するというボイルの法則が、空気ばねの弾性を生み出す基本原理となります。ばねの高さ・受けることができる荷重・ばね定数が独立に設定できる、絞りを設けることで減衰力を発生させることができる、調整弁を設けることでばね高さを一定に保つことができる、といった長所を持ちます。それによって、同じ条件下の金属ばねと比較してばね定数を小さくでき、車両の懸架装置として用いた場合は乗り心地を良くすることができます。欠点としては、金属ばねと比較して構造が複雑で、空気ばね以外の付属装置も必要となり、コストが高くなる傾向にあります。

アルゴンやヘリウムなどの不活性ガスを利用するばねもあり「ガスばね」と呼ばれます。ばね特性設定の自由度が高く、省スペースで大きな荷重を働かすことができるといった長所がある一方で使用温度に制約があり、ガス漏れのおそれがあるといった短所もあります。

磁気ばね

弾性ではないが磁石の磁気力を復元力として利用する「磁気ばね」と呼ばれるばねもあります。磁石の同極を近づけると反発力が発生するので、圧縮方向に復元力を持つばねとして利用できます。磁石の異極を対向させる場合は、磁石が横方向にずれたときに吸引力が発生するので、横方向に復元力を持つばねとして利用できるのです。

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